二代小川長楽の「赤茶碗」は、その温かみのある赤土の風合いと、手捏ねによる柔らかな造形美が特徴の逸品ですが、この茶碗にはさらに見事な金継ぎが施されています。それは、単なる修復ではなく、器の歴史を刻み、新たな美を生み出す要素として存在しています。 金継ぎは、割れや欠けを漆で継ぎ、金粉を施して仕上げる日本の伝統的な修復技法です。これは単に壊れたものを元に戻すのではなく、欠損を受け入れ、それを新たな景色として昇華させる考え方に基づいています。この赤茶碗に施された金継ぎは、もともとの赤土の深い色合いに美しいコントラストを加え、まるで器が新たな生命を得たかのような趣を醸し出しています。 元の造形の柔らかさに、金継ぎの流れるような線が加わることで、茶碗の表情に一層の奥行きが生まれました。繊細に施された金の継ぎ目は、ただの傷跡ではなく、時を経て深みを増した景色として、茶碗に新たな物語をもたらしています。茶席において、この金継ぎの美しさを味わいながら茶を喫することは、一服の抹茶とともに、時間の流れや無常の美を感じるひとときとなるでしょう。 また、金継ぎが施されたことで、茶碗の手触りにも変化が生まれています。滑らかな赤土の質感の中に、金がわずかに浮き立つことで、指先に心地よい感覚が伝わります。茶を点て、口に運ぶたびに、その存在を静かに意識させるのです。 この赤茶碗は、小川長楽の手によって生まれ、時間とともに割れを経験し、そして金継ぎによって新たな命を得た器です。それはまるで、侘び寂びの精神を体現するかのように、完璧さではなく、不完全の中にこそ真の美しさがあることを教えてくれます。茶の湯の場において、この茶碗とともに静かに時を過ごせば、その深い魅力をよりいっそう感じることができるでしょう。 ★寸法★ 口径11.5㎝ 高さ8.3㎝ 陶磁器の町、佐賀県伊万里市在住で古物商（第911100009525）を営んでおります「陶磁器ヨーソロー」と申します。 古伊万里、現代作家もの、個人で製作活動しているレアな窯元、有田焼伊万里焼の陶磁器を中心に出品しております。 未使用品に関しては陶磁器商社、骨董に関しては古物競りやコレクター依頼品でございますので、ご安心くださいませ。